PD zine

PD zineはプロダクト・インテリアデザイン学科の今をつたえるブログです。

2011.06.06

研究室便り

【研究室便り】”稲作”というものづくり

みなさんこんにちは。プロダクトデザイン学科曽和研究室です。
今日は、曽和研究室で取り組んでいる「稲作プロジェクト」について、ご紹介します。

曽和研究室では4年前から、国営明石海峡公園神戸地区という公園で稲作をしています。この公園は、今はまだ開園していませんが、里山を活かした公園づくりを目指しています。

なぜ芸術系大学が稲作?と思われる人も多いでしょう。農業と言えばやはり「農学部」。特に稲作は普通、「楽しそうだからやってみようかな〜」で始められるイメージなんて全くないですよね。まして、芸術やデザインを学ぶ上でどうして稲作が必要なのか・・・どう考えても、つじつまが合わないような・・・。

でも実は、この「なぜ?」がとても大切なんです。なぜ芸術系大学で稲作をするのか?この素朴な疑問に対する答えは、体感することで初めて、自ら答えを探り出すことができるんです。なぜモノづくりをするの? なぜ絵を描くの? なぜデザインを学んでいるの?・・・。単に「好きだから」だけでは、自分を磨くことはできません。好きだから+αのなにか、まったく新しい価値を見いださない限り、学びを生きることに活かすことはできないのです。

稲作活動にずっと参加してくれている学生がいます。芸工大だけではありません。いろんな大学のいろんな学部の人が参加しています。みんなに共通していることは、誰も農業体験者ではなかったこと。稲作なんて生まれて初めての人ばかり。でも、初めて稲作を体感して、はじめは全然うまくいかなくて、でも少しずつコツがつかめていく実感。その中で、「なぜ稲作をするのだろう?」という自らの行為に、自分自身で意味付けができるようになってくる。

はっきり言って、稲作作業は大変。朝は早いし、夏は暑いし、泥で汚れるし、腰は痛いし・・・。だけど、この活動で得られる「稲を育てている」という体験は、実は、とてつもなく貴重な、生きていく上の情報を与えてくれているのです。その情報とは何か。

こんな問題を出してみましょう。「田んぼに紙を引き詰めながら、手植えのできる器具をデザインしなさい」

何のコトやらさっぱりですね。でも実はこの問題、田植えの時に参加したみんなが「ほしい」と思った器具なんです。田んぼに入って、カミマルチという特殊な紙を使って手植えをした人だけがうなずける、とーってもニッチな器具なんです。この器具をデザインできる人は、この田植え経験をした人にしか分からない。だからこそ、この経験情報はとてつもなく貴重なんです。

いま、空前の「農」ブームといえる時代が来ています。有名な俳優さんも「農」をしているくらいに、「農」に注目が集まっている。でも、決してこれからの「農」にあった製品が世間にある訳じゃない。あえて「農」と描いているのは、従来の「農業」とは違った何かが、生まれようとしているから。この新しい「農」を知り、新たなモノづくりを考案していくためには、まずはともあれ、体験して見る以外に方法はないんです。

先ほど例に出した問題の答えを、田植えが終わったとの夕食時に、学生とずっと話し合っていました。「ああしたらいいんじゃないか」「こうしたら作れるんじゃないか」。ものすごく具体的な答えが、ぽんぽん出てくる。なぜか。それは、みんな自分が体験したことだから。自らの体が、五感をフルパワーに発揮して得た情報に基づいているから。だから、デザインできるんです。

6月5日に田植えが終わりました。今後は草抜き、草刈り、水管理とずっと作業が続きます。とても大変だけれど、ものを育てることは、ものづくりの第一歩。どうせ育てるなら、植木鉢でちょろっと育てるのではなくて、大きな大地に根を下ろして育ててみよう。

稲作状況は、曽和研究室webサイト( http://www.infoguild.jp )または、Twitter ( @infoguild ) でご覧になれます。

【文:曽和具之】