PiD zine

PiD zineはプロダクト・インテリアデザイン学科の今をつたえるブログです。

2013.06.23

研究室便り

【研究室便り】Agriculture+ プロジェクト

今日はぴでじんさんに替わりまして、「ふらんそわ」が、曽和研究室のプロジェクトをお送りいたします。

 今回お伝えしますのは、6年前から取り組んでいる「Agriculture+プロジェクト」についてです。
 「農業」と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか? 少し前だと、「重労働」とか「経営が大変」とか、ネガティブなイメージが強かった農業。今でも、TPP問題などで、国内の農業事情は決して楽観的なものではありません。でも一方で、若者を中心として、農への関心はとても高まっているように思われます。
 曽和研究室では、Agricultureを「農の業」として捉えるのではなく、人間が生きて行く上で大切な育みの過程「農の育」と捉え、Agricultureを通して学ぶことのできる、さまざまなプロセスを、+αのデザインの新たな「知」として育むプロジェクトを実施しています。
 何を育てているかというと、一言でいうと「お米(稲)」なんですが、単にお米を収穫するためだけではなく、稲の植わっている「棚田」という古い農法に従って、農薬を使わず、池の水だけで育てることによって、稲を取り巻く自然環境そのものを育てていると言った方が正しいかもしれません。

では、稲を育てることと、プロダクトデザインとに何の関係があるのでしょう? 実は、「アイデアを育むプロセス」は、稲作をするプロセスと、脳活動において、とてもよく似ているのです。
 例えば、以下のような問題が与えられたとき、あなたなら、どんなプロダクトを創作しますか?

■長さ200mのロール紙が10本ある。このロール紙を20mずつに切り分け、10本のロールに巻き直す方法を考えなさい。

 頭の中だけで創造できますか? 絵に描いてアイデアが生まれそうですか?
 どうして、上記の問題は難しいのでしょう? それはあなたに、「200mのロール」とか、「20mに切り分ける」ということに対する「経験値」がないからです。「200mのロール10本を20mに切り分けるとロールは何本できるか?」という問いなら簡単です。でも、実際にこの問題を解決するには、「何本できるか」が重要ではなくて、「2000mもの長い紙を如何に効率よく、かつ、使いやすいように切り分けるか」を創造する必要があります。そのためには、2000mの紙というモノがいったい「何モノなのか!」ということを経験値としてインプットしていないかぎり、この問題は解けないのです。
 プロジェクトに参加した学生は、こんな答えを出しました。

 このロール紙、何に使うかというと、雑草が出ないように、田んぼ一面に敷く「紙マルチ」と呼ばれる、農業用紙なんです。
写真だけを見ると、新しいしくみを創作したようには見えないのですが、作業の過程で、さまざまな「経験値」が得られています。
 実は、この「経験値」を育てることこそが、Agriculture+プロジェクトの真の目的なのです。
 「経験値」は、人と同じことをしていても上がるものではありません。また、同じ分野のことをしているだけでも、豊かな経験値は得られません。いろんな分野の、いろんな問題を実体験で学ぶことで、デザイン創造としての「経験値」は大きく上がっていくのです。
 モノのあふれる現代社会。でも、社会にはまだまだ、新たな知恵と工夫に満ちあふれたモノを必要としている舞台があるのです。 June first, 2013. written by fracSowar.